スマホの無い日。

スマホが無い。

気づいたのは駅前。時間の確認をしようとコートのポケットに手を入れたら何も入っていなかった。

いつも決まってコートの左ポケットと決めているので、他のところにも入っていないだろうとは思いながらも、一応すべてのポケットを探る。

やっぱり無い。

途中で落とした?いや、そもそも今日スマホをポケットに入れた覚えがない。

たぶん、家だ。

どうしよう。でも取りに戻ったら大幅に遅刻する。よし……今日はスマホ無しで1日過ごそう。

 

スマホ無しで過ごすのは久しぶりで、ある意味新鮮。でも電車やバスの移動中どうしたら良いんだ。そんなことを考えてたけど、じっくり考えたいこともあったので、案外何もすることが無くなるということはないだろうくらいに思っていた。

 

しかし、困ったことがあった。

今現在の時間がわからない。腕時計をしないから、スマホが無いと時間を確認する方法が無い。そして更に困ったのは、街中で時間を確認する方法があまりにも無さすぎること。

駅では電光掲示板に時計が付いているから時間の確認ができるものの、駅から外はほとんど時計が見当たらない。駅前のバス停でバスを待っている間、時刻表はあるけど現在時刻がわからないから、次にどのバスが来るのかわからない。予定に間に合うかどうか不安になる。

 

とりあえず来たバスに乗ったものの、このバスが予定通り進んでいるかわからない。一応、乗ってきた電車からすると、バスが遅延しなければ間に合うはずだけど、遅れているかどうかの判断が付かない。先方に事前連絡をしようにもスマホは無い。ただただ不便で不安。考えごととかマジでどうでも良い。時間が知りたい。

 

バスの中から街中に時計を探す。全然見つからない。バスが通るような大通りに、時計が立っている場所なんて見当たらないし、特に住宅街なんて時計がありそうな雰囲気すら無い。 

 

あ、いや、

 

学校だ。

 

学校なら確実に外から見える時計がある。幸運にも今バスが走っているエリアには学校が多い。学校はすぐに見つかり、ここで初めて時間の確認ができた。バスも遅れてはなさそうだし、目的地へは余裕を持って到着できそう。ようやく、安堵。

 

時間がわからないだけでこんなに不安と焦りに悩まされるとは思わなかった。

スマホを時計代わりにしていた弊害を味わった日だった。これで定期だの財布だの身分証明だのもスマホになっていたら、なんかもう何にもできない日になっていたんだろうな……まだアナログが少なからず残る時代で良かった。